はじめに
こんにちは!10学年差姉弟がモンテッソーリ園生活を経験しているママライター・さっしーmamaです。
先日「チエコトバ」代表の谷口梨花先生から「子どもの集中力が続かない」という悩み相談が多いと伺いました。「集中力ってどんなふうに育つのだろう?」と色々話して大いに盛り上がり、子育てでも自分自身にとっても「集中力」は大切なキーワードだと実感しました。そして、「集中力が続かないこと」に視点を向けるのではなく、「集中できるのはどんなとき?」と視点を変えて考えることで、集中力を育むヒントが見えてくるように感じました。
今回は、肩の力を抜いて「集中力」について一緒に楽しく考えていきましょう。
「集中力」は楽しみながら育てよう
「集中力」は「大変さに耐える力」ではない!
「子どもの集中力」という言葉で、お子さまに関する悩みを含め、どんなことを思い浮かべますか?
食事や着替えなどの途中で遊んでしまう、ワークなどの勉強がなかなか進まない、宿題がダラダラと時間がかかるという悩みもあるでしょう。何かチャレンジしていることに真剣に取り組めない、すぐ投げ出してしまうと感じている方もおられるかもしれません。(わが家でも思い当たる節がたくさん…(笑))
ここで1つ、立ち止まって考えてほしいことがあります。それは「集中力」という言葉の背景に、継続作業や座学など「大変なことや気が進まないことにも耐える力」という意識があるかもしれないということです。「集中力」は必ずしも「つらいことを頑張る力」とはいえず、切り分けて考えることで見えてくるものがたくさんありそうです。
「楽しいこと」ならやりたくなる・続けられる
「集中力を育てる」にはどうすればよいか…そのヒントを探るために、人間のごく自然な姿…「3つの当たり前」に注目してみましょう。
2.疲れを感じればやめたくなる・より楽しいことがあれば目移りする
3.「できた」「勝った」はやっぱり嬉しい
この「3つの当たり前」について考えると、「集中力が続かない」のは「集中できない」人の状態だけが問題なのではなく「取り組む内容・取り組み方」が重要と感じられるのではないでしょうか。

チエコトバリューのコラムで印象に残っている大好きなエピソードがあります。
あるモンテッソーリ園で、お仕事に全く興味を示さなかったA君という男の子がいました。お母さまによると、A君は電車が好きで、週末は駅で何時間でも電車を見ているそうです。そこで先生は、A君の「好きなこと」を出発点にすることにしました。お仕事に取り入れてみたのです。電車のミニチュアの数を数えるお仕事や電車の絵にスタンプを押すお仕事などを準備して誘ってみました。すると、大好きな電車をきっかけに集中現象が見られるようになったのです。1か月もすると、電車以外のお仕事にも自ら取り組むようになりました。
チエコトバリュー「子どもは飽きっぽいって本当?モンテッソーリ教育で集中力が育つ秘密」より
大好きで得意分野の電車に関するお仕事を自らどんどん取り組み、集中する姿が見られたA君のエピソード。「集中力が続かない」お子さまでも、遊びやスポーツなら「大好きですごい集中力を発揮できる分野」が既にあるかもしれません。もしくは「これは好き!」と思える分野に出会って夢中になることがきっとあるはず。そう考えると、「集中力が続かない」のは「集中力は備え持っているけれど、求められる特定の場面で発揮できていない」だけなのかもしれません。
好きなことを長時間続ける経験をしている?
お子さまには、大好きな遊びや大好きな分野がありますか?自らその遊び・分野に関することをしはじめて、長い時間楽しんで続けていますか?
いわゆる「集中力」が求められることが多いのは、取り組むのが「大変なこと」が多いものですが、「大変なこと」を「好きなこと」より長い時間続けるのはなかなか難しいもの。だからこそ、好きなことに長時間没頭する機会を多く持つことで「何か1つのことを長い時間続ける経験」を積めるようになります。
わが家がお世話になっているモンテッソーリ園では、子どもが好きな教具を選んでお仕事をする時間があり、納得するまで行ってから次のお仕事に移ります。他のおともだちが同じ教具に興味を持っても、先に使っている子どもが納得するまでは待ってもらい、交代します。大きな時間枠の中では、長い時間何度もお仕事を続けても大丈夫です。また、やり方がわからないときは先生に聞いてやり方を提示してもらいますが、モンテッソーリ教育らしく、「訂正せず何度もお手本を見せる」方法を採ります。
母として、子どもが好きなお仕事を選び、納得するまで思う存分取り組み、興味を広げてできることが増えていく過程が集中力を育む大切な機会になったと感じています。
この経験からも、「集中力を育てる」近道は
- STEP1. 楽しいことに没頭・集中する経験を積む
- STEP2. いろいろなことにチャレンジして得意分野を増やす
- STEP3. さまざまな分野に集中して取り組めるようになる(コツがつかめ応用できる)
という3ステップで「楽しみながら集中力を育てる」ことなのではないかと思います。
「集中している」ってどんな状態?3つの言い換えで考える
先ほどご紹介したチエコトバリューのコラムには、マリア・モンテッソーリが提唱した「集中現象」についても紹介されています。
モンテッソーリの重要な発見のひとつに「集中現象」があります。彼女は、子どもたちが自ら集中して学んでいる状態を「集中現象」と呼びました。(中略)自らの発達課題と出会えた子どもは、われを忘れて目の前の「お仕事」に没頭します。そうすることで、自然に静けさが訪れるのです。「静かにしなさい」と教師が言っているわけではないということがポイントです。
チエコトバリュー「子どもは飽きっぽいって本当?モンテッソーリ教育で集中力が育つ秘密」より
子どもが興味を持ったことに「我を忘れて没頭する」のが「集中現象」といえます。では、この「集中している状態」はなぜ起こり、続くのでしょうか。「集中している状態」の3つの言い換えから考えてみました。
「集中している」= 夢中・無心で気持ちいい状態
取り組んでいることが面白くて、夢中になって引き込まれているとき、ワクワクするような楽しさを感じたり、逆に無心になって心静かになったりと、かたちは違えど「心地よさ・気持ちよさ」を感じられているのではないでしょうか。
わが子がモンテッソーリ園に入園当初、母子分離が苦手で泣いてばかりいたとき、心を落ち着けてくれたのは「ごますりのお仕事」でした。ごまをする感触、すって細かくなっていく面白さ、できたときの達成感、家族に食べてもらったり、お弁当で食べられたりする嬉しさなど、惹かれるポイントの多いお仕事ですが、無心になってゴリゴリとごまをするあの感触を味わう心静かな時間はとても気持ちよかったようでした。
不安も多い新生活で「ごますりの楽しさに集中する心地よい時間に、よい意味で気を取られた」ことで、心が安定したように感じました。好きなことで満たされるって大事ですね!
入園・進級…新しい環境へ踏み出す勇気をくれたモンテッソーリのお仕事
「集中している」= やめられない・続けたい状態
好きなことに集中しているとき、楽しくてもっと続けたい、もう一回やりたい、やめると味気ないと感じた経験は誰しもあるのではないでしょうか?
取り組んでいること自体の楽しさ・気持ちよさが続いてほしいという感覚はもちろんありますが、例えば先ほどお話したごますりでは「もっとごまが細かくなるようにしたい」というステップアップへの欲求や、モンテッソーリのお仕事やブロック遊びなど「もっと違うバリエーションに挑戦してみたい」という好奇心などから、もっともっとやりたい・続けたいと感じることもあるでしょう。ついつい楽しくてやってしまう・続けてしまう・やめられない…そこに「集中している状態」が自然と生まれます。
「集中している」= 達成する過程にある状態
ステップアップや新しいバリエーションへのチャレンジと若干類似していますが、作品を完成させたい・何かができるようになるまでやりたい・勝つまで何度もやりたい、という「何かを達成するまでの過程にある状態」でも「集中している状態」になることがあります。達成する目的意識を持ち、ゴールをイメージでき、「できた!」という嬉しさを感じたり、(小さなステップでも)実際に達成する喜びを得たりする経験の積み重ねが、集中力にも繫がっていくのではないでしょうか。
わが家の場合、鉄棒の逆上がりをできるまで何度も何度もチャレンジしたときの集中力がとても印象に残っています。達成感だけでなく、うまくいかない・失敗した悔しさあっての諦めない気持ち、投げ出しても、またやろうとチャレンジする気持ち、全ての経験が活きてきます。ついつい失敗を避けるよう口を挟んでしまいがちですが、自戒の念も込めて、失敗や残念だった経験もたくさん積ませてあげたいものですね。こう考えると、集中力は向上心とも密接に関わっているのだなと感じます。

「集中力を育てる」ためにおうちの方ができる3つのこと
ここまで、集中力は楽しいこと・好きなことに没頭する経験を積んで育てていくことと、「集中している状態」を通してどんなとき・どんなことに集中できるのかについて考えてきました。
結局は、子どもが積み重ねてきた経験をもとに集中力が育っていく、ということに尽きるのかもしれませんが…その経験を豊かにし、「集中力を育てる」サポートについて、おうちの方ができることを3つ考えてみました。
心身ともに「集中できる健やかさ」をサポート
1つ目は、日々健やかにのびのびと、自分らしく過ごせるよう陰ながらサポートすることです。おうちの方にできる、おうちの方にしかできない一番大切なことかもしれません。
・日々の疲れ(身体的・精神的)をしっかり癒し、発散している
・取り組んでいることが子どもにとってキャパシティオーバーになっていない
・大人に先回り・否定されず、子どもの意志が尊重され、主体的に行動できる
何よりも子どもに体力的・精神的・時間的な「ゆとり→元気」があるからこそチャレンジしたい気持ちが湧いてくるのではないでしょうか。園や習い事などで取り組んでいることそれぞれが実りあるものであっても、生活の中での「余白」が減ってしまっていては、新たなチャレンジがしづらかったりエネルギー切れになったりすることが多いと感じています。大人が思うよりも、子どもにとって「ごろごろダラダラ」は必要で、そこでエネルギー充電がしっかり貯まるのかもしれません。
そして、最も大切で最も難しいのは、上に挙げた4番目の項目。大人はよかれと思って、チャレンジしてほしいものを提示してやらせてみたり、うまくいかないときに正解の方法に導いたり、そのときに「それじゃあダメだね」と何気なく否定の表現をしていたりすることって、ありますよね。私自身もついついやってしまいがちですが、本人がやろうとしていることを中断し違うやり方に転換させることで、集中している状態を大人が邪魔しまっている場合も多くあります。実は全ては「よかれ」と思ってやっていること。そんなとき、モンテッソーリ教育において「自ら選ぶ気持ちを尊重する」「お手本を何度も提示し、訂正しない」ことが良いヒントになるかもしれません。まずは、子どもから援助をリクエストされるまでは見守る…という方法はいかがでしょうか。
「好きなこと」を増やすサポート
2つ目は、「好きなこと」を深め、バリエーションも増やしていくサポートです。もちろん、遊び・趣味、ゲームなどでもいいと思います!好きなものをとことん好きでいられる環境は大切です。「もう◯◯ばかりして!」はひとまず封印しましょう(思うところがある気持ちは私も共感します(笑))。
息子はかなりのポケモンマニアなのですが、知れば知るほど「知識の張り巡らせ方」が自然と身についていっている感覚があります。「水は火を消すから、みずタイプは、ほのおタイプに強い」とか、実在の動物を模したポケモンで生き物の名前を覚えたり、技の名前で四字熟語が覚えられたり!何事も深めるとその他のことに繫がり世界が広がり、深めた経験がまた新たな分野に応用していけるのだなと感じます。
電車好きなお子さまなら、旅して名物を楽しむとか、好きなことから新しい体験を増やしていくのもいいですね。子どもが主体的に楽しめる経験・チャレンジをする中で、好きなことに出会えるかもしれません。しかも、その経験は家族の大切な思い出にもなっていくはずです。
「ちょうどいいチャレンジ」をベストタイミングで提供するサポート
3つ目は、できることを増やす・広げていくお手伝いです。2つ目でお話した、好きなものに関連することにチャレンジしてみるのと少し似ていますが、「これができたら、次はこれも楽しいかも!」をベストタイミングでお誘いすると、できることがどんどん広がります。これは、子どもの様子や興味を「子ども目線で」よく観察し、知っているからこそできること。モンテッソーリ教育でも大切なキーワード「敏感期」をうまくキャッチすると世界が広がりやすいと感じます。
「イヤイヤ期」の対処法にも!モンテッソーリ教育の「敏感期」って何?
例えば、モンテッソーリ園で蝶結びのお仕事を習ってきた息子は、ありとあらゆるヒモを蝶結びしたがります(笑)。その中には結びにくい素材・細さ・長さのものもありますが、試行錯誤の中でコツをつかみ、キュッとしっかり結べるようになってきました。他にも、私の自転車のペダルとタイヤの動きが気になり出しているので、そろそろ自転車の練習を始めようかな…など、いわゆる「マイブームが熱いうちに」応用して広げていけるよう心がけています。
まとめ
今回は「集中力」をテーマにお話しましたが、いかがだったでしょうか。
「好きなこと」「できること」をどんどん増やすと、得意分野が増えてきて、生活・勉強でも集中することが苦にならないシーンがたくさん出てきます。また、チャレンジして克服できた経験を活かして、苦手なこともチャレンジできるようになります。だからこそ、「集中する訓練」ではなく「得意分野を増やすチャレンジ」が集中力を育てる近道なのではないかと思うのです。
おうちの方はお子さまが心身ともに健やかに過ごせるサポートと、興味をさりげなく広げてあげるサポートができる大切な役割を担っています。失敗の経験も(安全は確保しつつ)しっかりさせてあげたり、気が散らない(取り組んでいることより魅力的なものに移らない)環境を整えたりするなど、裏方としてできる大切なこともあります。
まずは、お子さまが思いっきり楽しめる経験をたくさん重ねていく・おうちの方も一緒に楽しむということが、結果的に、さまざまなことに集中力を発揮できる力を育んでいくのではないでしょうか。