はじめに
「子どもは飽きっぽい」「集中力が続かない」とよく聞きます。
本当でしょうか?
モンテッソーリ教育の現場でよく目にするのはそれとは反対の姿です。子どもたちが、時間がたつのも忘れてモンテッソーリの「お仕事」に集中する姿が見られます。
高い集中力はモンテッソーリ教育がもたらす力のひとつです。実際に、将棋の藤井聡太棋士などモンテッソーリ教育を幼児期に受けた人の共通項として、「集中力が高いこと」はよく挙がります。
では、なぜモンテッソーリ教育で集中力が育つのでしょうか?
本記事では、モンテッソーリ教育で集中力が育つ秘密をひもといていきます。
なぜモンテッソーリ教育で集中力が育つの?
モンテッソーリ教育と集中力の話をする前に、モンテッソーリ教育について見ていきましょう。
モンテッソーリ教育は、1907年にイタリア初の女性医師で教育者でもあるマリア・モンテッソーリ博士により考案されました。誕生から110年以上たちますが、現在世界140以上の国にモンテッソーリ園が存在していると言われています。
マリア・モンテッソーリは、医師、科学者としての知識、経験を活用して、子どもを科学的に観察し、観察した事実に基づいて教育法や教材を開発しました。当時から科学技術が著しく発展した現在においても、その教育法の確かさが証明されていることも特筆すべき点でしょう。科学的な教育法だからこそ、時代や文化などの違いを超えて、今なお広がり続けているのです。モンテッソーリ教育については、こちらの記事も参考にしてください。
変化の激しい昨今、意欲やコミュニケーション力、集中力など、数字で測るのが難しい力である「非認知能力」に注目が集まっています。様々な研究から、非認知能力は社会で活躍する鍵となるだけでなく、学力テストの成績(認知能力)にも影響することが明らかになっています。つまり、非認知能力は生涯よく生きる土台となる力であり、世界中で重要性が認識されています。
実は、マリア・モンテッソーリは110年以上前にそのことを見抜いていました。モンテッソーリ教育で培われるのは、集中力や行動力、意志力などの非認知能力です。つまり、110年以上前に生まれたモンテッソーリ教育のメソッドが、今の時代の子育てにも十分活用できる、むしろ未来につながる重要なことを教えてくれるということです。
モンテッソーリ教育で培われる力のなかでも、集中力は保護者の方が子どもにぜひ身につけてほしいと願う力のひとつでしょう。将棋の藤井聡太棋士などモンテッソーリ教育を幼児期に受けた人は、「集中力が高い」とよく言われます。実際、モンテッソーリ教育の現場では、高い集中力を発揮している子どもたちの姿がいたるところで見られます。
では、なぜモンテッソーリ教育で集中力が育つのでしょうか?
それには、モンテッソーリ・メソッド「集中現象」が深く関連しています。
モンテッソーリ教育の現場が静かで落ち着いている理由
モンテッソーリ教育の現場をはじめてご覧になった方は、たくさんの幼児がいるのにとても静かで落ち着いていることに驚きます。実際、子どもたちはそれぞれ自分の「お仕事」に集中しているので、モンテッソーリ教育の現場にはとても静かな時間が流れています。
よく大人は、「子どもはいつも騒がしくて落ち着きがない」「飽きっぽい」と言いますが、実はそれは大人の先入観、思い込みかもしれません。
マリア・モンテッソーリは、思い込みではなく子どもを観察することで子どもの発見をした人です。モンテッソーリの重要な発見のひとつに「集中現象」があります。彼女は、子どもたちが自ら集中して学んでいる状態を「集中現象」と呼びました。
チエコトバでも、集中現象がいたるところで見られます。
もちろん、子どもは大声を出すことも泣くこともあります。しかし、自らの発達課題と出会えた子どもは、われを忘れて目の前の「お仕事」に没頭します。そうすることで、自然に静けさが訪れるのです。「静かにしなさい」と教師が言っているわけではないということがポイントです。
集中現象はどうしたら現れるの?
集中現象が現れた子どもは、お仕事に繰り返し取り組み、最後までやろうとします。そうすることで、最初はできなかったことがだんだん上手にできるようになり、達成感や満足感を得ます。重要なことは、その達成感や満足感は、先生に教え込まれたのではなく子どもが主体的に取り組んだ結果だということです。つまり、子どもは集中現象を通して自ら育っていくのです。
このように、集中現象は子どもの人格的成長を促します。
では、集中現象はどうしたら現れるのでしょうか?
集中現象は、その時の子どもの発達段階、モンテッソーリ教育でいう「敏感期」にぴったりの課題に出会うことが鍵になります。そのため、モンテッソーリ教育の現場では、注意深く子どもを観察し、今子どもが必要としている環境を整えます。そして、子どもにぴったりのお仕事に誘います。集中現象は子どもが自ら関わることで現れますが、そのためには教師・大人を含めた環境がいかに重要であるかがわかります。
家庭で子どもの集中力を育む方法
では、家庭で子どもの集中力を育むにはどうすればいいのでしょうか?
ここまでご紹介してきたモンテッソーリ教育の集中現象を活用することができます。
モンテッソーリ教育の現場から、家庭で再現できるポイントを3つご紹介します。
① 好きなこと・興味があることからはじめましょう
モンテッソーリ教育の現場でも、最初は落ち着きがなく、お仕事に興味を示さない子どももいます。そのような子どもはどうやって集中現象にいたるのでしょうか?
あるモンテッソーリ園で、お仕事に全く興味を示さなかったA君という男の子がいました。お母さまによると、A君は電車が好きで、週末は駅で何時間でも電車を見ているそうです。そこで先生は、A君の「好きなこと」を出発点にすることにしました。お仕事に電車を取り入れてみたのです。電車のミニチュアの数を数えるお仕事や電車の絵にスタンプを押すお仕事などを準備して誘ってみました。すると、大好きな電車をきっかけに集中現象が見られるようになったのです。1か月もすると、電車以外のお仕事にも自ら取り組むようになりました。
このように、好きなことや興味があることを起点にすることで、集中力が高まり、他の分野にも興味関心が広がることは多くの事例から実証されています。
子どもを観察して、好きなことや興味があることに存分に取り組める環境をつくりましょう。
② 集中できる環境を整えましょう
モンテッソーリ教育の現場では、子どもに必要なものがきれいに整理整頓された環境があります。
家庭でも、子どもが集中できるような環境を整えたいものです。とはいえ、家をモンテッソーリ園と同じようにしなければいけないわけではありません。ちょっとした工夫で、集中できる環境はつくれます。
例えば、好きなことに集中しようとしても、騒がしい環境では持続しません。集中している時は、テレビなどは切って静かな環境をつくりましょう。また、モノが多すぎるのも集中を妨げる要因になります。部屋におもちゃがあふれているという場合は、よく使うおもちゃを厳選して、あとは片づけてしまいましょう。
家具も重要です。モンテッソーリ園の家具は、子どもサイズを徹底しています。特にお仕事をする机や椅子は重要です。机と椅子は子どもが座った時に、床にぴったり足がつく高さのものがお薦めです。
下記のような子どもの身長にあった椅子や机を用意し、お仕事をする時はそこで行うようにしてもいいですね。
③ 集中している時は消極的に見守りましょう
モンテッソーリ教育の現場では、教師は子どもの活動を妨げたり中断させたりしません。モンテッソーリ教師が、「教えない先生」と言われるゆえんです。
家庭でも子どもが集中している時は、手や口を出して集中を妨げないように保護者は見守ることに徹しましょう。
特に言葉がけは最小限にしたいものです。子どもが集中している姿はすばらしいので、つい声をかけたくなるという気持ちもわかります。また「何を作っているの?」と質問したくなることもあるでしょう。しかし、それは子どもの集中力を妨げてしまいます。
子どもが一生懸命に関わる姿、つまり集中現象が現れたら、保護者は消極的に接するようにしましょう。消極的というのは、干渉せず、温かく見守るということです。それは、子どもを尊重するということに他なりません。
自らお仕事を終えた時に、たくさんねぎらってくださいね。
冬休みにモンテッソーリ教育で子どもの集中力を育む
冬休みに、好きなことや興味があることに思う存分集中する経験をしてみませんか?
モンテッソーリ教育をベースに、子どもの才能を開花させ、思考力や表現力、非認知能力を育む東京・新宿の幼児教室チエコトバでは「冬休みモンテッソーリお仕事教室」を開催します。
今回は、満2歳~6歳(年長)までの幼児クラスに加えて、満1歳からの親子クラスを新設します。
教室には、子どもを集中現象に誘う様々な教具があります。また、教師は子どもの集中を妨げないよう、一人ひとりを観察したうえで最適な環境を整え、サポートに徹します。
幼児期に集中力を育てたいとお考えの方は、ぜひお越しくださいね。
▼冬期講習「冬休みモンテッソーリお仕事教室」のお申し込みはこちら