モンテッソーリ園の行事と子どもの成長(後編・「音楽会」と「学芸会」での芸術性)

はじめに

こんにちは!10学年差姉弟がモンテッソーリ園生活を経験しているママライター・さっしーmamaです。
今回は、「モンテッソーリ園の行事と子どもの成長」の後編です。
前編では、「運動会」や「作品展」などの行事が普段なかなかできないチャレンジの機会を与えてくれることや、みんなで協力したり誰かの役に立ったりすることで自分が大切な存在だと実感できることなどをお話しました。

後編となる今回は「音楽会」と「学芸会」がテーマです。
「演奏・演技などがしっかりできるか」が気になる行事ですが、出番以外の時間の成長ポイントにも注目して考えて行きましょう。

音楽を作り上げる楽しさを満喫!音楽会

音楽会に力を入れている園は多いのではないでしょうか。園選びをする際にも音楽教育をポイントに選んだという声をよく聞きます。

わが子の通う園では音楽ホールを使っての音楽会や器楽合奏のカリキュラムがあり、「本物に触れる」ことを大切にして音楽教育が行われています。

年間を通して演目を準備!「普段の日々」の積み重ねで成長する

わが子の園ではクリスマス前に音楽会が行われますが、普段の保育で慣れ親しんだ歌や演奏を披露するので準備は春から始まります。日々親しんだ大好きな曲が背中を押してくれて、大舞台でも堂々と歌ったり演奏できたりするように感じます。
冬の音楽会に備えて、暑い季節にもクリスマスの歌を練習したり、四季折々の歌を音楽会で披露したりもします。季節と違う歌ではありますが、それだけ練習をするという積み重ねが自信につながっているのだなと感じます。

音楽会のために練習するのではなく、日々成長してきたありのままの姿を発表する場が音楽会、という感覚に近いのかもしれません。だからこそ、我が家でも普段の頑張りをしっかり褒めてあげようと意識していました。おうちでも一緒に歌ったり家族の前で発表してもらったりすると楽しさや自信につながり、のびのびと自己発揮できるきっかけになるかもしれません。

一人ひとりの力が集まって素敵な音楽ができる

わが子の園の場合、音楽会では学年ごとにそれぞれ歌と楽器演奏を行い、年齢に応じて内容がステップアップします。

年少は歌がメインで、はじめての楽器として鈴を使います。
年中になると楽器演奏の比率が少し増え、鍵盤ハーモニカ・ハンドベルなどでメロディーを奏でたり、カスタネット・鈴などの打楽器を演奏したりします。
年長ではさらにアコーディオン・木琴・鉄琴・ドラム類が加わり、長めの曲を合奏します。

音楽会練習のお手伝いに行くと、子どもたち一人ひとりが担当の楽器を演奏することで「自分が音楽を作り上げる一員である嬉しさ」を感じているのが伝わってきます。

実はこの嬉しさは、演奏がうまくいったときだけではなく、うまくいかない経験があってこそ感じるものかもしれません。

自分が音楽を作る一員であることは、逆に「自分が役目を果たさないと歌や演奏がうまくいかない」という面も持っています。うまく音が出ない場合やお休みの子がいる場合にメロディーが欠けてしまったり、演奏するタイミングを間違えたりすると曲に違和感が出てしまいます。この失敗の実体験があるからこそ、自分が与えられた役割をしっかり果たすことに誇りを持てるように感じます。
毎年、難しいリズムやタイミングがなかなか成功しなかったり、大きく重い楽器を小さな体で上手にハンドリングできなかったりするケースがよく見られます。でも、練習を重ねて乗り越え本番を迎える姿は晴れ晴れとしていて、見ている大人も思わず涙腺が緩みます。

「自分の担当を心を込めて務めることで素敵な音楽が作り上げられる」経験は、自分の存在意義を感じることにもつながっているのだなと感じます。だからこそ、単なる「担当楽器」だけではなく「担当のミッション」として臨むお子さまの気持ちを応援してあげたいものですね。

年中の息子は、カスタネット担当が嬉しくてたまらない様子です。トライアングルのおともだちとの掛け合いの練習を頑張っているようで、さらに仲良くなったと笑顔で話しています。担当を機に交友関係が広がったり深まったりするのも嬉しいですね。

「静けさ」がキーワード!「出番でないとき」にも成長がいっぱい

音楽会における成長でキーワードとなるのは「静けさ」です。なかでもポイントとなる3つの静けさについてお話します。

「静けさ」のポイントその1: 「静かに待つ力」

ホールなどで行う音楽会。出番前の時間など、静かに待つことは元気な子どもたちにとっては大変なことです。
わが子の園では、モンテッソーリ園らしいひと工夫で子どもたちが静けさを楽しめる工夫をしています。それは「音感ベル」のお仕事です。

みんなが集まった時、初めに「音感ベル」をします。最初は2つの音感ベルを鳴らして同じ音程かどうかを子どもたちに尋ねます。日を追うごとにベルの個数を増やし、先生の持つベルと同じ音程のベルを持っているおともだちは誰かを当てるというクイズ形式で進めていきます。クイズにすると子どもたちは真剣に聴き、もちろん、つい盛り上がりそうにもなりますが、静かに手を挙げた子が答えられるという方式にすると自然と静かな状態になります。そしてクイズの後も静かに待てるようになるのがすごいなと感じます。

「音感を育てる」教育と「静粛の練習」を兼ね備えた音感ベルのお仕事はモンテッソーリ園らしい手法で、わが家では、普段聞こえてくる音に反応する会話が増えるきっかけにもなっています。

「静けさ」のポイントその2: 「静かに聴く力」

他クラスなどのおともだちの歌・演奏を静かに聴くこともなかなか大変なことです。これも単なる「忍耐」ではなく、「おともだちの良いところを見つけて発表する」ことを習慣化することで、目的が「静かにする」ことから「しっかり聴く」ことにシフトしていき、自然と静かに聴けるようになっていきます。
良いところを探すと、自分の歌・演奏に生かすこともできるし、褒められた子どもは自信がつき、音楽がより好きになり、さらなる成長につながります。

「静けさ」のポイントその3: 「静かに集中する力」

出番に臨む時には「静かに集中する力」がとても大切になってきます。入退場のタイミングはもちろん、音楽をしっかり聴いて適切なタイミングに歌い演奏をするという非常に難しいことをこなしています。静かに「待つ力」+「聴く力」の2つが複合された「集中する力」が音楽会で育まれる大切な力だと感じます。

音楽会を通じて感じた3つの成長ポイント

音楽会を通じて感じた成長ポイントは3つあります。

ポイント1:舞台の成果は普段の積み重ね

幼稚園・保育園の場合、音楽会の舞台発表は、行事に向けての限定的な練習ではなく普段の保育で親しんできた曲を発表する場合が多いと思います。本番に向けて長い期間何度も練習して準備する大切さを学び、その積み重ねで自信を得て大きな舞台に立つという貴重な経験ができる機会ではないでしょうか。

ポイント2:自分の担当ミッションが自己肯定感につながる

「音楽を作り上げる大切な一員」であることは、責任感を育むとともに自分の存在意義を感じ自己肯定感にもつながります。歌や演奏の良いところを褒めてもらうと、さらに自信につながり、向上心も育まれます。

ポイント3:「静けさ」が子どもの力を引き出す

「静けさ=忍耐」と思われがちですが、「静かにする」ことを目的とせず、モチベーションに意識を向けることで「静けさ」を実現できます。公の場で静かにするなど、社会に適応するための行動ができるようになったり、静かに集中することで新たな発見や能力の発揮にもつながったりします。

1年間の集大成!1時間の劇作品を演じる学芸会

わが子の園では1年の集大成とも言える学芸会が年度末にあります。年少から年長までの縦割りグループでの発表で、童話をベースに1時間程度の劇をホールで披露します。そんな学芸会での成長ポイントについて考えていきましょう。

舞台で一人ひとりが台詞を担当する緊張感と楽しさ

わが子の園の学芸会では、年少から年長まで全員が必ずスポットライトを浴びる機会があります。保護者協力のもと、衣装・大道具・小道具・照明・音響も本格的にします。1学期末から長い間かけて少しずつ練習し、年始からは何度も通し練習を重ねていきます。

ここでも音楽会と同じように「自分の役が物語を作っている」ことが、責任感・自己肯定感を育み、演技の良いところを褒め合うことでますます高め合っていくことができます。

音楽会と違うところは「個性の発揮」です。物語の役を尊重しながらではありますが、台詞の抑揚や舞台上での動き等、「自分らしく演技する」ことにより劇の面白さや完成度がぐんと高まります。個性をのびのびと発揮したり、表現を自分らしく工夫し評価してもらえたりするのは学芸会ならではの成長ポイントと言えるかもしれません。

長い劇を演じるのも観るのも「待つ」がキーワード

音楽会で育んだ「静けさ」の力が学芸会でも発揮されますが、長い発表なので演じる側も観る側も「待つ」ことがキーワードになります。もちろん、お客さまとして「劇を観る」、演者として「出番を待つ」という楽しさを感じながら待ちますが、やはり子どもたちにとっては長く大変な時間です。

通し練習では、演技そのものより、おしゃべりや動いてしまう等の「待つ態度」を注意されてしまうケースが多いものですが、そこで繰り返し先生は「自分が舞台にいるとき、おともだちが違う話をしていたらどう思うかな?」と話されます。積み重ねると不思議と、本番が近づくとともに雑談が減り、それまで注意されていた子が、出番を終えて舞台裏に戻ってきた子をねぎらう姿が見られるようになります。舞台裏担当の保護者だった時には、その成長に思わず涙が出そうになることがありました。

学芸会は舞台に立つ姿に注目しがちですが、それを支えている時の成長にも是非目を向けてお子さまに声をかけてあげてください。その共感がさらなる成長へのパワーになるはずです。

学芸会を通じて感じた2つの成長ポイント

これまでご紹介した行事の成長ポイントに加え、学芸会ならではの成長ポイントが2つあります。

ポイント1:個性を発揮して評価される嬉しさを知る

学芸会は「自分らしさ・個性」を発揮しやすい機会ではないでしょうか。自分らしくパフォーマンスし、それが認められる経験は普段の生活ではなかなかできない貴重な経験です。また、その行事限りの作品に取り組むなど、大きくなっても思い出に残りやすい行事といえるかもしれません。

いま中学生の娘の場合、卒園から10年弱経っても、幼稚園時代のおともだちを学芸会の役とともに思い出すと話しています。それだけ、各人のキャラクターや「らしさ」が発揮される場なのかもしれません。

ポイント2:待つ時間・支える時間の大切さを知る

学芸会は、役割分担がある作品発表など、「支える人がいること」「待つことも支えることの一部であること」を感じる機会が多い行事です。たくさんの人の協力があってはじめて何かを作り上げられるということは、多くの人の力で社会が動いていくことにも通じるものがあります。機会があればそのような話をしてみても良いかもしれませんね。

まとめ

今回は、音楽会・学芸会を通じて感じた成長ポイントについてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。

共通して感じたことは、出番=アウトプットが注目されがちな行事も、おともだちの発表を楽しむ=インプットの貴重な機会であり、多くの人に支えられて発表ができることを知るきっかけにもなるということです。

これから行事練習が多い時期に入る方も多いと思います。アウトプットはもちろん、インプットや支える・待機する側面にも目を向けながら、頑張っているお子さまを温かい言葉・楽しい遊び・美味しいごはんなどでサポートして、行事での晴れ舞台を思いっきりご家族みんなで楽しめたらいいですね!思い出に残る楽しい行事となるよう、陰ながら応援しています。