ママライターのモンテ子育て体験記『ぽこ・あ・ぽこ』第1回 入園・進級…新しい環境へ踏み出す勇気をくれたモンテッソーリのお仕事

はじめに

はじめまして!10学年差姉弟がモンテッソーリ園生活を経験しているママライター・さっしーmamaです。今回からママライターのモンテ子育て体験記『ぽこ・あ・ぽこ』が始まります。

『ぽこ・あ・ぽこ』は音楽の用語で「少しずつ」という意味です。子どもたちの成長は、毎日の小さな成長の積み重ね。さまざまなことが起こる日々のなかで、笑ったり泣いたり楽しんだり…モンテッソーリ園でのエピソードや、わが家でのおうちモンテッソーリを中心に、モンテ子育て生活の中で感じたことやおすすめ情報をお伝えします。

第1回は、わが家の体験談をもとに、入園時の不安を乗り越える上で大切な役割を果たしたモンテッソーリのお仕事についてお話します。

春は入園・進級など新しい環境での日々が始まる季節。環境の変化は大人でも気を遣うものですが、子ども達にとっても大変なことです。特に、初めて家族と離れて園生活をするお子さまならなおさら。毎朝泣いたり登園しぶりをしたりして困っているおうちの方も多いのではないでしょうか。
そんな時に新しい環境へ踏み出す勇気をくれたのは、モンテッソーリのお仕事でした。モンテッソーリ園に通っていなくても、おうちモンテッソーリでも子どもの心にもたらす効果は大きいはずです。新しい環境は不安や戸惑いも多いけれど、新たなものの見方や行動を身につけられる大切なチャンス。お子さまの心をあたたかく支え、成長につなげるためのヒントになれば幸いです。

新生活の朝は大騒ぎ!

「行きたくなぁ〜い〜(泣)」

朝の登園時間帯に泣いて抵抗している子どもをよく見かける季節になりました。「まさにうちの子の状況!」と思ったあなた、毎日本当にお疲れさまです。いつか大丈夫になると思っていても、今がつらいですよね。「朝が来るのが憂鬱…」なんてこともあるのではないでしょうか。

ただでさえ親子とも新生活のリズムに慣れない中で、ぐずる、用意が進まない、朝ごはんを食べない、時間がなくておうちの方も声を荒らげる悪循環、出発できても園の玄関で暴れて邪魔になる、園バス乗車に手間取りみんなを待たせる…「もう大騒ぎの大パニック!」という話もよく聞きます。

何を隠そう、今日の息子(年中)がそうでした(笑)!そして、娘(現在中3)も年少の頃は長い期間寂しがってよく泣いていました。息子は現在進行形なわが家ですが、「行きたくない」と言ってもシンプルに家を出る寂しさがあるだけで、入園当初とは内容と質が変化してきたように感じます。その背景で大切な役割を果たしたのがモンテッソーリのお仕事でした。

姉弟ともモンテッソーリ園に通っていたわが家は、母子分離不安や登園しぶりを乗り越える上でモンテッソーリのお仕事に支えられてきたのです。

「行きたくない・寂しい」の背景にあるもの

モンテッソーリのお仕事がどうして子ども達の心を支えたのかをお伝えするには、まず「どうして園に行きたくないのか?」その心理を考える必要があります。

ここではわが家のケースで感じたことをお話しますが、今母子分離や登園しぶりに悩んでいる方にも共通していることがきっとあると思います。ぜひ、お子さまの状況と照らし合わせてみてください。

単純に家族と離れるのが寂しい

おうちの方と離れて日々を過ごすことそのものが子どもにとっては初めての経験。何が起こるかわからない「異世界」のように感じるものです。

寂しさの裏にある「頼れない不安」

おうちの方と離れた時にお世話やフォローをしてもらえないことも不安に感じるようです。
しばらくして、おうちの方がいなくても先生が自分を受け入れてくれる頼れる存在であると気づいた時、とにかく先生に頼るようになります。そうして先生は「みんなの先生」であることを理解するようになり、友達にもしっかり目が向くようになります。
そこまで到達したのはわが家の場合は、入園から半年ほどたった頃でした。

生活の流れを体感的に理解できていない不安

園生活に慣れていない段階では、どうやって過ごすかわからないことで「何が起こるか不安」という気持ちにもなるようです。これは、園の毎日のルーティンを何度も何度も繰り返し「いつもの過ごし方」になることが何よりの解決策です。

わが家はプレからモンテッソーリ幼稚園に通ったのですが、それは教室やトイレの配置、教室内の教具の配置など「どこに何がありどんなことをするか」を親子で体感的に理解するためでした。
入園までに幼稚園がどんなところかを知ることができましたが、それでもまだ不安は残り、日々の積み重ねが解決へと繋がりました。
昨今はコロナで難しい場合もありますが、どうしても母子分離がうまくいかない場合は、必要に応じて親子登園を許可してもらっている方もいました。一日の流れをおうちの方が知って自宅でも話をすることで、安心感を持たせられるかもしれません。

友達とともに過ごす緊張感

おうちの方としては、「お友達との関わりを持ってほしい」「遊んだら楽しくなるはず」と考えがちですが、同世代に興味を持って積極的に関わっていく子ばかりではありません。特に赤ちゃんからコロナ禍で、控えめなお友達付き合いを強いられた今の入園世代ならなおさらです。
お友達という感覚どころか、先生と違って同世代は「話が通じない」「予想外の反応が返ってくる」ことに驚き、なかなか心を開けないケースもあるようです。日々の生活に慣れて、安心できるようになればお友達と楽しく遊べるようになるでしょう。その日は必ず来ます!

心を安定させたモンテッソーリのお仕事

「寂しい、行きたくない!」の心情の背景には、新しい環境に適応するストレスや不安がたくさんあることがわかります。だからこそ、まずは心のザワザワ・モヤモヤ・不安感を受け止め、和らげ、安心させてあげることが前向きな成長につながる第一歩です。

わが家の子ども達にとって、登園後すぐ行うモンテッソーリのお仕事が心を落ち着かせ安定させる上で大きな助けとなりました。朝に園バスを降りて教室に入って、泣きながらでもまず初めにやることが、お気に入りのお仕事「ごますり」でした。昨日も息子はごますりの袋を持って帰って来ましたし、娘も「幼稚園のお仕事で、ごますりが一番楽しかった〜」と今でも話しています。

夢中になれる・達成感がある!「ごますり」のお仕事

「ごますり」のお仕事は、文字通り、すり鉢でごまをするお仕事です。とんかつ屋さんの小さなごますり鉢をイメージしていただけるとわかりやすいと思いますが、子どもが扱いやすい小さめサイズのすり鉢を使います。

「ごますり」のお仕事のやり方

  1. 使う道具の名前を覚える(すり鉢・すりこぎ・スプーン・ごま)
  2. スプーンでごまをすくってすり鉢に入れる
  3. ごまをする
  4. スプーン(木のヘラ等も可)でごまをあつめてお皿や袋などに移す

モンテッソーリのお仕事は一見シンプルな動作であっても手先と頭をしっかり使って行います。右利きの場合、すり鉢を左手で支えながら右手ですりこぎを使い、ごまをまんべんなくするのはなかなか大変です。その分できたらとても達成感があります。家族や先生に褒めてもらえるとますますうれしくなりますね。

ごますりのお仕事のいいところは、

  •  手先をコントロールする力が身につく
    (日常生活だけでなく、鉛筆を持って書く力にも通じます!)
  •  夢中に・無心に作業できる(楽しく心静かな時間)
  •  援助してもらいながら初回から完成でき、1人でできる・どんどんきめ細かくなるなど完成度が高まる喜びがある
  •  おいしく食べられて満足できる

などがあります。
達成感は自信につながり、自己肯定感を育みます。自分で頑張っておいしく食べられると満足度もアップ!食育にもなりますね。また、食事作りのお手伝いにもなるので、役割を果たすうれしさも感じられます。

モンテッソーリのお仕事が子どもの心を支えた理由

毎朝の「ごますり」ルーティンで自信をつけた子ども達は、他のお仕事にもバリエーションを広げ、お仕事で作った作品もたくさん持って帰ってくるようになりました。お仕事のバリエーションが増えれば増えるほど幼稚園を楽しむ様子もしっかり感じられるようになりました。

モンテッソーリのお仕事がどうして子どもの心の成長を支え、自立を助けたのか、子ども達の様子や話を通して感じたことをお伝えします。

モンテッソーリのお仕事が自信と自己肯定感を育む

モンテッソーリのお仕事には、できる喜び・上手になる喜びが必ずあります。時には難しい動作でも、大人の援助を受けながら少しずつチャレンジすることで、どんどんできることが増えていきます。

お仕事ができた達成感は自信につながります。そして、先生・友達・家族に褒められることで自己肯定感がどんどん高まります。お仕事をする中での先生や家族とのコミュニケーションも、自分を受け入れてもらえると感じる大切な要素ですね。

心の静けさが心のざわつきを癒やす

もう一つ、モンテッソーリのお仕事ならではの良さとも言えるのが心静かに没頭できる時間を楽しめること」です。子どもの遊びにはなかなかない良いところではないかと感じます。

元気に奔放に遊ぶのが「子どもらしい」と考えられがちですが、様々なタイプの子ども達が思い思いのお仕事を黙々と楽しんでいる姿を見ると、子どもも心静かな時間が大好きなことがよくわかります。

入園直後は特に、涙や不安で高ぶった心をモンテッソーリのお仕事で楽しみながらクールダウンさせ、自分でできる喜び・「自分は大丈夫」という自信を重ねていくことが大切だったと思います。息子も娘も、モンテッソーリのお仕事に心を支えられ、園生活をのびのびと楽しむことができるようになりました。

まとめ

モンテッソーリのお仕事は「能力を高めるためのもの」と考えられがちですが、目的はそれだけではありません。できることが増えて自信がつき、得意・好きなことを日々楽しみ、満足し、自己肯定感をしっかりと感じることができるのです。「自分でできる!大丈夫!」の気持ちは、母子分離から始まる自立において最も大切な要素とも言えるでしょう。
また、お仕事に夢中になる時間は、楽しさと心の静けさが同時に味わえる貴重な時間です。不安の多い入園時には、心のざわつきを鎮めて楽しさに変えてくれるお仕事が子ども達の心を優しく包み込んで支えてくれるでしょう。

モンテッソーリ園やモンテッソーリ教室だけでなく、おうちモンテッソーリで大好きな家族と一緒にお仕事を楽しむのもすてきですね!身近なものでできるお仕事も多いので、はじめての方でも楽しくスタートできます。
新しい環境で頑張っているあなたのお子さまにもぜひ、モンテッソーリのお仕事を楽しむ機会を設けてみませんか。日々子育てに悩む同志として、あなたとお子さまを心から応援しています!