はじめに
子ども達が未来を切り拓くために必要な力はたくさんありますが、「論理的思考力(ロジカルシンキング)」もそのひとつ。チエコトバ代表は多くの企業で論理的思考力の研修を行ってきましたが、論理的思考力はビジネスに限った話ではなく、子どもから大人まで必要な力だと感じます。
学習指導要領でも論理的思考力は注目されており、教育現場でも様々な取り組みが行われています。とはいえ、論理的思考力を育てるために幼児・小学生のうちから何ができるかわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、論理的思考力とはどのような力なのか、幼児期から論理的思考力を身につけるために家庭でどのようにサポートをすればいいのかを解説します。
論理的思考力とは

論理的思考力(ロジカルシンキング)とは、「物事を体系的に、筋道を立てて考える力」です。立場が異なるたくさんの人とコミュニケーションをとりながら進めるビジネスの現場で重視されている力です。論理的思考力といえばビジネススキルのように思われがちですが、ビジネスシーンのみに活用できるスキルではありません。なぜなら、論理的思考力は、相手にわかりやすく伝えるために不可欠なスキルだからです。人が集まる場所ではコミュニケーションが必ず生まれます。それは学校も同じです。特に最近では、学校現場でも探究学習や体験学習など人と関わりあう学びが重視されています。学校内外で多様な関係者に対して自分の考えをわかりやすく伝える力、複雑な課題を整理して物事を前に進めていく力は今後ますます重要になるでしょう。
小・中・高校の「学習指導要領」では、学校教育全体を通して育む力である「(実際の社会や生活で生きて働く)知識及び技能」「思考力、判断力、表現力」「学びに向かう力、人間性」という3つの資質・能力(いわゆる「3つの柱」)があげられています。論理的思考力は、その柱のひとつです。
文部科学省の「論理的な思考」の説明では、「国立教育政策研究所」による下記の6つが論理的に思考する過程での活動としてあげられています。
- 規則、定義、条件等を理解し適用する
→資料から読み取ることができる規則や定義等を理解し、それを具体的に適用する - 必要な情報を抽出し、分析する
→多くの資料や条件から推論に必要な情報を抽出し、それに基づいて分析する - 趣旨や主張を把握し、評価する
→資料は、全体としてどのような内容を述べているかを適確にとらえ、それについて評価する - 事象の関係性について洞察する
→資料に提示されている事象が、論理的にどのような関係にあるのかを見極める - 仮説を立て、検証する
→前提となる資料から仮説を立て、他の資料などを用いて仮説を検証する - 議論や論証の構造を判断する
→議論や論争の論点・争点について、前提となる暗黙の了解や根拠、また、推論の構造などを明らかにするとともに、その適否を判断する
これらは、学ぶ土台として、また他者とコミュニケーションをとるうえで非常に重要な要素だといえるでしょう。
またプログラミング教育必修化の背景にも論理的思考力の重要性があげられます。文部科学省は、将来どのような職業に就くとしても普遍的に求められるのが「プログラミング的思想」だと述べています。そしてプログラミング的思考とは「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」と定義しています。
そのうえで、小学校段階のプログラミング教育については、「小学校学習指導要領の総則においてプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動を計画的に実施すること」としており、小学校段階から様々な形で論理的思考力を育もうとしていることが伺えます。
論理的思考力の2つのメリット
それでは、論理的思考力を身につけるとどんないいことがあるのでしょうか。大きく2つあります。
1. 問題解決の力があがる
社会で直面する様々な問題には、明確な答えがないものがほとんどです。そしてたいてい、物事は複雑にからみあっています。そうした問題を整理して考えるためには、論理的思考が不可欠です。
論理的思考のためには、有効なフレームワークがいくつかあります。例えば「MECE」。これは、ある概念全体を、重なりも漏れもない部分の集合にわけて考えることです。企業研修でよく取り上げるのは、自社の顧客(全体)をMECEに要素分解してみようというもので、年齢や居住地域などでわけられます(MECEの切り口は無数にあります)。脊椎動物を魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類にわけるのもMECEのひとつです。
また、たくさんの情報がある時に情報をいくつかのグループにわけて、論理をピラミッドの形に構造化することも有効です。ピラミッドストラクチャーといって、結論のメッセージを頂上において、そのメッセージをサポートするメッセージをピラミッドのように配置していくものです。(このあたりは、ロジカルシンキングの様々な本で詳しく解説されています)
これらのフレームワークも活用して、やるべきことや考えるべきことの漏れがないようにすると、複雑な問題も解決の糸口が見えてくるのです。もちろん幼児や小学生がこれらのフレームワークを今使うわけではありませんが、論理的思考のトレーニングを積むことで、問題解決の精度は着実にあがっていくでしょう。
2. コミュニケーションがスムーズになる
コミュニケーションの問題の原因は、自分の考えが相手に正しく伝わらないことです。経験がある方も多いのではないでしょうか。論理的思考力を身につけると、論理的に筋の通った伝え方ができるようになります。
コミュニケーションは、必ず相手がいるもの。自分だけにしかわからないものではなく、相手にとってわかりやすい論理展開をすることで、目的を果たしやすくなります。特に前提情報を共有しない相手(学校現場でも違う学年、学校、地域、企業などと協働する場面も増えていますよね)と円滑なコミュニケーションを進めるうえで、論理的に筋の通ったわかりやすい伝え方ができるかどうかは非常に大事なポイントになります。
家庭でできる論理的思考力トレーニング
学校教育でも様々な実践が行われていますが、論理的思考力のような思考のしかたは、教科書で学ぶだけでは身につきにくい力。繰り返し使って、失敗もたくさんしながら体になじませていくことが近道です。時間がかかるからこそ、幼児、小学生のうちから意識して実践していくことが鍵になります。
幼児や小学生もできる論理的思考力トレーニングとしてお薦めは、下記の2つです。
1. 読書
論理的思考には、自分の思考を客観視することが不可欠です。読書が論理的思考のトレーニングに効果的なのは、読書を通して作者の意図をくみ取って、自分の知識や経験と照らし合わせたり、取り入れたりする力がつくからです。
また、論理的思考力と語彙力にも深い関係があります。情報を整理したり、それをわかりやすく伝えたりするには、それを説明できるだけの語彙力が必要だからです。読書は語彙力を増やし、表現力を豊かにする極めて有効な方法です。
様々なジャンルの本に触れられるように、家庭でも読書の環境を整えられるといいですね。
2. 家族でディスカッション
ディスカッションというと何か難しそうですが、テーマは何でも構いません。「今度の休みにどこに行くか?」など身近なテーマについて家族で話し合う機会をつくってみましょう。
その際のポイントは「根拠をもつこと」。「〇〇したい」といわれたら「なぜ?」とその結論にいたった理由を問うてみるのです。「だって・・・」の「・・・」の後に続く言葉が根拠(エビデンス)です。最初はつたなくて構いません。自分の考えを相手に正しく伝え、理解してもらうためには、丁寧に根拠を積み上げることが必要だということを実感することに意味があります。
幼児期、小学生のうちにこのような経験を積み重ねることが、中学生以降、データから根拠を構築していくスキルにつながります。
自分の頭で考える習慣をつける
論理的思考には「自分の頭で考えること」が絶対に必要です。これからの子ども達にとって、自分の頭で考えた正しい(と思われる)解にたどりつくことができることは、未来を切り拓く大きな力になるでしょう。
幼児にとって抽象思考や論理的思考はまだ難しい時期ではあります。とはいえ、自分の頭で考える習慣、シンプルなテーマについて筋道を立てて考える芽は幼児期から十分育てられると思います。
子ども達が生きていく未来は、何も考えずに前例に従えばいい世界ではありません。「なぜそうなの?」「あなたはどう考えるのか?」を問われることが多くなるでしょう。一朝一夕では身につかないからこそ、幼児、小学生の間から親子で時間をかけて自分の頭で考える習慣をつけていきたいですね。
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