はじめに
手指の巧緻性とは、いわゆる器用さのことです。手や指を器用に動かすことができるようになると、お箸を使って一人で食事ができるようになったり、ボタンのある服も一人で着られるようになったりします。巧緻性は、自立につながる重要な力であると言えるでしょう。また、昨今受験者が増えている小学校受験でも巧緻性は重視されています。
幼児期に巧緻性を高めたいとお考えの保護者の方も多いのではないでしょうか?
手指の機能が大きく発達する幼児期は、巧緻性を高めるのに最適です。本記事では、楽しみながら手指の巧緻性を高めるコツをご紹介します。
巧緻性を高めることは自立につながる
手や指を器用に動かせるようになることは、自立への一歩です。
例えば、スプーンやフォークが使えるようになると、一人で食べることができるようになります。もう、誰かが食べさせてくれるのを待つ必要はありません。自分のタイミングで食べたいものを食べたい分だけ食べることができるのです。
また、手や指先がしなやかになった子どもは、ボタンやファスナー、チャックがある服も一人で着ることができるようになります。服の選択肢も広がるでしょう。
このように、「こうしたい」と思ったことが思い通りにできるようになることは、人格の芽生えにつながります。「一人でできた」自信は子どもの自己肯定感を高め、自立へと歩ませます。
巧緻性を高めることは自分の意志通りに動く身体をつくるだけでなく、自立心を高めるという精神的な側面からも非常に重要だと言えるでしょう。
巧緻性の高さは小学校受験でも重視される
昨今、受験者が増えている小学校受験でも、巧緻性は必ずといっていいほど評価項目に入っています。
自分の意志通りに動く身体の基礎ができていることや自立心が芽生えていることは、小学校以降の学びにおいても鍵になります。だからこそ、小学校受験でもそれらを測るひとつの方法として、巧緻性のテストを行うのでしょう。
小学校受験の巧緻性のテストでは、先生の指示に従って実際に手や指を動かして制作などを行います。お箸で豆をつかむ「豆つかみ」や折り紙、はさみやのりを使った工作など、出題内容は学校によって様々ですが、いずれも受験生がどれだけ正しく、丁寧に手や指を動かすことができているかが評価されます。
巧緻性の高さが小学校受験で重視されていることからも、巧緻性は小学校以降の学びにおいても非常に重要であることがわかります。
家庭で楽しみながら巧緻性を高める方法
巧緻性は、手指を使う動きを繰り返し行うことで養われます。個人差も大きいので、今はまだ上手に手や指を動かせなくても心配する必要はありません。日常の遊びや生活のなかで、手や指をたくさん動かす機会をつくってみましょう。
ここでは、家庭で楽しみながら巧緻性を高める活動を3つご紹介します。
これらは、モンテッソーリ教育の『日常生活の練習』分野のお仕事(モンテッソーリ教育では活動を「お仕事」と呼びます)のひとつでもあります。特別な道具を必要としないため、家庭でモンテッソーリ教育を行う「おうちモンテッソーリ」でも人気があります。
1.はさみで切る
チエコトバでも大人気のはさみの活動。「危なくてまだ使わせていない・・・」という声もよく聞きますが、ワークショップで実際に切ってみると、保護者の方が驚くほど上手に切る2歳前後のお子さまは非常に多いものです。
もちろん安全への配慮は必須ですが、はさみで切ることは手指の発達を促すのに最適な活動です。危ないからといって遠ざけるだけではなく、子どもの発達や興味に応じて安全に楽しく活動できる環境を整えてみてはいかがでしょうか?
ただし、はさみのサイズには注意が必要です。子どもサイズのはさみがあってはじめて、効果的に巧緻性を高めることが可能になります。大人用のはさみは危険であるだけでなく、上手に切れないので活動そのものが嫌になってしまうかもしれません。反対に、おもちゃのような切れないはさみもストレスになります。対象年齢やサイズを確認して、お子さまの手にぴったりのよく切れる本物のはさみを選びましょう。
2歳前後のお子さまがはじめて使うなら、はさみの先端が丸みをおびたもの、刃先カバーがついているものが安心です。さらに、スプリングつきの下記のようなはさみは、弱い力でも切ることができます。
はさみに慣れてきたら、下記のようなはさみにステップアップしてもいいでしょう。少し重くなり、切れ味も鋭くなります。複雑な模様、細かい線などを切るのに最適です。小学生にもお薦めです。
切る紙の厚さは画用紙くらいがいいでしょう。1回切りからはじめます。紙を帯にしたものを用意してあげましょう。
徐々に直線や曲線など難易度をあげていきます。切る紙で難易度を変えられるので幼児から小学生まで楽しめます。きょうだいやお友達と一緒に活動するのもいいですね。
2.シールを貼る
ご家庭でシール遊びをしている方も多いのではないでしょうか?
巧緻性を高めるという観点では、ただ貼るだけでなく枠を意識して正確に貼ることがポイントになります。
貼ることに集中するために、シールはシンプルなものがいいでしょう。お薦めは、100円ショップでも手に入る丸シールです。シールの大きさで難易度を調整できます。
はじめは直径15~18mm程度の大きな丸シールを、枠に沿って貼っていきます。あらかじめひとつずつ切り離しておくと、はがしやすくなります。
台紙は手作りでもいいですし、市販もされています。
シール貼りは、楽しみながら巧緻性を育むのに最適な活動です。狙ったところにぴったり合わせて貼ることで、指先の調整力がつき、洗練された身体をつくります。
3.あけ移し
感覚器官や運動器官の発達が目覚ましく、指や手首がしなやかになる2歳頃から、スプーンやトングを使ったあけ移しに挑戦してみましょう。
すくうもの(小豆、砂など)と道具(手、スプーン、トングなど)によって難易度が変わります。子どもの発達や興味に合わせてアレンジしてください。
年中頃からは、お箸を使ったあけ移しにも挑戦してみましょう。お箸を使ったあけ移しは、小学校受験でもよく出題されます。小学校受験では、全部あけ移すまでのスピードを測るケースもあります。お箸を上手に使うためには、手や指先の洗練が不可欠です。あけ移しを繰り返し練習することで、手や指先を調整、コントロールする力がつきます。
巧緻性は1日にして成らず!継続が重要
このように、特別な道具が必要なく、日常の遊びや生活のなかで実践しやすいのも巧緻性の特徴のひとつです。
とはいえ、巧緻性は一朝一夕に高まるものではありません。少しずつでも毎日継続して行うことが鍵になります。そのためにも、楽しみながら取り組める環境づくりをしたいものです。
はじめはうまくできないこともありますが、保護者の方がゆっくりとやって見せてください。そして、集中しはじめたらそっと見守り、子どもが自分でできるようにサポートしましょう。
このような活動を毎日行うことで、巧緻性が高まるだけでなく、人格形成に必要な理解力や意志力、集中力なども養うことができます。
本記事を参考に、今日から日常生活に巧緻性を高める活動を取り入れてみませんか?
モンテッソーリ教育で楽しみながら巧緻性を高める
モンテッソーリ教育を受けて育った人は、巧緻性が高いとよく言われます。
それは、モンテッソーリ教育には手や指を動かすお仕事がたくさんあることと関係します。
モンテッソーリ教育の現場では、子どもたちが自ら選んで手先や指先を動かすお仕事に取り組む姿がいたるところで見られます。巧緻性が最も発達する幼児期に手を十分使うことは、未来を切り拓く力につながるでしょう。
モンテッソーリ教育をベースに、子どもの才能を開花させ、思考力や表現力、非認知能力を育む東京・新宿の幼児教室チエコトバでは、2歳半~6歳(年長)のお子さまを対象に、モンテッソーリコース幼児クラスの体験レッスンを開催しています。
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