我が子が将来いきいきと活躍するために 幼児、小学生の「今」しておきたいこと

はじめに

将来、自分の力を最大限に発揮して、いきいきと社会で活躍してほしいーー。

多くの子育て中の保護者の方が、我が子に抱いている願いではないでしょうか。

モンテッソーリ教育をベースに、思考力や表現力、非認知能力を育む東京・新宿の幼児教室『チエコトバ』代表の筆者は、乳幼児から社会人まで全年齢の教育に20年以上携わってきました。現在も子どもたちへの教育と並行して、社会人教育に携わっています。最近も、日本を代表する複数の企業の2023年度新入社員研修に登壇しました。

それらの経験から、今幼児や小学生を子育て中の保護者の方に伝えたいことがあります。

それは、社会で活躍する力の土台は「今」、つまり幼児や小学生の間に培われるということ。

本記事では、乳幼児から社会人までを通した教育現場での経験や、「OECD Education 2030」プロジェクト、最新の学習指導要領の内容も踏まえて、将来社会で活躍するために幼児、小学生の「今」しておきたいことを解説します。

OECDが定めた2030年に求められる力とは?

今幼児、小学生の子どもたちが成人して社会に出るのは2030年代以降。

2030年、どんな社会になっているのでしょうか。

VUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代にあって、未来はますます予測不可能になっています。今は存在すらしていない技術が日常で使われていたり、仕事の種類や内容も大きく変化していたりするかもしれません。

とはいえ、予測することが困難だからといって、手をこまねいているわけにはいきません。教師や保護者は、子どもたちが不確実な状況のなかでもすこやかに生きて、世界を切り拓いていけるように最大限サポートをする責任があります。

では、子どもたちが成長して世界を切り拓いていくために、どのような知識やスキルをつけていけばいいのでしょうか。

参考になるのが、OECD(経済協力開発機構)が2015 年から進めてきた「OECD Education 2030」プロジェクトです。このプロジェクトは、「現代の生徒が成長して2030年という近未来において世界を切り拓いていくために、必要な知識やスキル、態度は何か」そして、「それらを学校や授業でどのように育成するのか」というふたつの大きな問いについて検討するために立ち上がりました。日本はプロジェクト開始当初から参加し、イニシアチブをとってきました。

多くの国が参加したこのプロジェクトでは、これらの問いに対するひとつの答えとしてラーニング・コンパス(学びの羅針盤)が示されています。ラーニング・コンパスでは単に知識やスキルの習得にとどまらず、不確実な状況に対応するために3つの力を重視しています。

それが、

  1. 責任ある行動をとる力
  2. 対立やジレンマを克服する力
  3. 新たな価値を創造する力

です。

さらにOECDは、ラーニング・コンパスの中心概念のひとつに「エージェンシー」を据えています。

直訳するのは難しいのですが、文部科学省はエージェンシーを「自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく姿勢・意欲」と解説しています。そして具体例として、将来的な目標を見据える力や批判的思考力、現状に疑問を持つ力などを挙げています。他人の判断や評価に左右されるのではなく、自ら責任を持つという意味合いが強く表れていますね。

ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)は、子育て中の保護者の方にも参考になるところが多いと思います。詳しくは、文部科学省の中間報告をご覧ください。

小学校卒業までに身につけたい力

この「エージェンシー」は、年齢を問わずこれからの学びのキーワードです。

幼稚園から高校まで全面実施されている新学習指導要領でも、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)が全体の柱になっていますが、これこそまさに「エージェンシー」です。

さらに、「エージェンシー」はここ数年の新入社員研修のキーワードとも密接に関連します。

新入社員研修では、「自立した社会人」になるために「自ら考え、主体的に行動する力」をつけるために必要なマインドの醸成・スキルの習得をゴールに置いています。人事の方からは「自走する力」という言葉もよく聞きます。

つまり、社会で活躍するためには、「自ら考え、主体的に行動する力」が不可欠だということです。

そして「自ら考え、主体的に行動する力」は年齢を問わず、これからの社会でいきいきと活躍し、生涯にわたりウェルビーイング(心と体の充実感や幸福度)を実現するために欠かせない力です。

ただ、実際に新入社員研修を担当したり、中高の先生方とお話したりするなかで感じるのは、これらの力は年齢が上がれば上がるほど身につけるのに大きな自己変容が必要だということです。

考えてみてください。

自ら考えるより正解を覚えることに注力してきた人、親や先生の指示を待ってばかりだった人が、いきなり「今日から自ら考え、主体的に行動してください」と言われて、対応できるでしょうか。

難しいでしょう。実際、このギャップは企業の人材育成の現場でも大きな課題となっています。

だからこそ、小学校卒業までに「自ら考え、主体的に行動する力」の土台を身につけることが鍵になるのです。

幼児、小学生の「今」やっておきたい3つのこと

「将来社会で活躍してほしい」と願うなら、幼児、小学生の今から「自ら考え、主体的に行動する力」を育む体験をたくさんしておくことがとても重要です。

あらたまって何かを勉強するわけではありません。なぜなら「自ら考え、主体的に行動する力」は、小学校に上がる前の幼児期から、日常生活や遊びなどの体験を通して育まれていく力だからです。

とはいえ、やはり環境は重要です。「自ら考え、主体的に行動する力」が自然につくような環境をつくってあげられるといいですね。日常生活や遊びなどの場面で意識しておきたいことを3つ紹介します。

1.「自分で」選び、決める機会を増やす

大学や学部、就職先も親に決めてもらう–。学生の進路支援の現場で実際に、何度も遭遇した経験があります。彼らの言葉を聞いていると、自分の人生なのにどこかひとごとのように感じました。自分で選ぶ力、決める力が育まれないまま大人になると、人生の節目で重要な決断ができなくなります。

『チエコトバ』で取り入れているモンテッソーリ教育でも「自分で選ぶこと」が非常に重視されています。今日どんなお仕事を選ぶのか、いつやめるのか、すべて子どもにゆだねられています。教師は適切なサポートはしますが、最終的に選び、決めるのは子ども自身です。自分で選び、決める力は幼児期に大きく育ちます。それは、考える力、判断する力にもつながります。この時期に、自分で選ぶ経験、決める経験をたくさんしたいものです。

自分で選ぶ・決めるといっても、幼いうちは小さなことでかまいません。その日に着る服、外食先で食べたいメニューを選ぶことなどでもじゅうぶんトレーニングになります。

その際に、子どもが選び、決めたことを尊重するようにしましょう。せっかく決めたことを覆されると、結局他人の判断をあおぐようになってしまうからです。選択肢を準備して選んでもらうのもいいですね。

2.探究的な学びを体験する

最近「探究学習」という言葉をよく目にする方も多いのではないでしょうか。「探究」は最新の学習指導要領のキーワードでもあります。今回改訂された学習指導要領では、小学校から高校まで、探究学習の充実が目指されています。

探究学習は、探究的な考え方を働かせ、横断的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標にしています。

文部科学省も、「探究学習はこれからの時代においてますます重要な役割を果たす」と言っています。

子どもたちが社会に出る頃、これまでとは違った「課題」がたくさん生じているでしょう。その課題を解決する答えは、これまでの枠組みのなかにはないはずです。幼児、小学生から、答えのない問いに向き合う経験を親子で一緒にできるといいですね。出発点は何でもかまいません。「なぜ?」と不思議に思う気持ちを大切に、親子で探究学習に飛び込んでみましょう。

また、探究学習には、問題に主体的に取り組む姿勢が何よりも大事になります。自分が当事者だという認識、そして自覚をもたないとそもそも課題を解決しようとは思わないでしょう。

そのためには、保護者の方自身が不思議に思っている姿、知りたいという気持ちを子どもに見せるといいですね。

3.多様な他者との関わりを大切にする

OECD、文部科学省は、エージェンシーの特徴として「人や社会における関係性の中で育つもの」と説明しています。

新しい学習指導要領でも、「協働的な学び」がキーワードになっています。

文部科学省によると「協働的な学び」について、「探究的な学習や体験活動などを通じ、子供同士で、あるいは地域の方々をはじめ多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育成する『協働的な学び』を充実することも重要である」と説明しています。

子どもたちが社会に出る2030年以降の世界は、ICTの発展も相まって異なる背景、文化、言語などを持つ人と、ともに学ぶ、仕事をする、遊ぶといった場面は当たり前の光景になっているでしょう。幼児、小学生のうちから多様な他者との関わりを大切にできるといいですね。

夏休みなどの長期休暇は、様々な場所でサマースクールやワークショップ、イベントが開催されています。そういった場は、違う学校、年齢のお友達が集まっていることが多いでしょう。様々な人と関わりながら学び、その学びを通じて、エージェンシーを育むことにつながる機会として、活用するのもお薦めです。

幼児、小学生の「今」が将来の土台になる

こういった体験を幼児、小学生の間にたくさんしている人は、社会人になってもそれらのプロセスを応用できています。

社会人というとはるか先のことのように感じますが、0歳~社会人までの教育に長年携わってきた経験から、「今」と「未来」はつながっていることを実感しています。幼児期、小学生の時の学びや体験が、たとえ当時の記憶や学んだことそのものは薄れていても、10年後、20年後に花開く場面を実際にたくさん見てきました。

小学生までは特に、何を学ぶかだけでなく、どのようなプロセスでどう学ぶかが大事だと言えるでしょう。

我が子が将来いきいきと活躍するために、幼児、小学生の「今」を親子で充実したものにできるといいですね。

オンライン&マンツマーマンで子育てやおうち教育の相談ができる!

幼児、小学生の「今」が大事だとわかっていても、何かと忙しい毎日。具体的に何をどうすればいいのか不安を持たれる方も多いのではないでしょうか。

モンテッソーリ教育をベースに、子どもの才能を開花させ、思考力や表現力、非認知能力を育む東京・新宿の幼児教室『チエコトバ』では、乳幼児、小学生の保護者の方向けにオンラインコースも開催しています。

『チエコトバ』代表で、乳幼児から社会人までの教育に精通する筆者が、ご家庭やお子さまの状況や希望進路に応じたアドバイスをします。今だけでなく、10年後20年後のありたい姿も一緒に考えられたらと思っております。

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