モンテッソーリ園の行事と子どもの成長(前編・「運動会」と「作品展」での身体の成長と社会性)

はじめに

こんにちは!10学年差姉弟がモンテッソーリ園生活を経験しているママライター・さっしーmamaです。
秋になり、幼稚園・保育園では運動会や音楽会など、さまざまな行事が控えているのではないでしょうか。

わが子の活躍を見ることができる園行事。大切な思い出となるだけでなく、大きな成長のきっかけになります。また、未就園児のおうちの方にとって、入園前に園のカラーや雰囲気・教育の進め方等を知ることができる貴重な機会でもあります。

そこで、今回(前編)・次回(後編)の2回にわたり、園行事における子どもの成長ポイントを、モンテッソーリ教育の視点を踏まえて考えていきます。わが家の実体験を踏まえて、行事で感じた成長やよかったことを親目線でまとめてみました。

前編となる今回は「身体の成長と社会性」をテーマに「運動会」と「作品展」に注目します。
各行事における成長ポイントやお子さまの頑張っているポイントを意識して、ぜひたくさんねぎらい、褒めてあげてくださいね。笑顔とともに、たくさんのパワーを充電して、一層のびのびと成長できるはずです。

運動の秋!運動会で体も心も成長

運動会を機に行事ラッシュが始まる方は多いのではないでしょうか。わが子の園でも10月に運動会が行われます。現在年中の息子のエピソードとともに、運動会での成長ポイントについて考えていきましょう。

準備は春から!普段の保育で慣れ親しんだお遊戯のダンスを披露

運動会の見せ場といえば、かわいいお遊戯のダンスです。わが子の園でも、普段の保育で慣れ親しんだダンスを年少・年中クラスが披露します。
準備の始まりは1学期、春の桜の季節から。毎日歌って踊って、大好きになった「定番ソング」でステージに立ちます。

「並ぶ・歩く・参加する」ことだけでも小さな子どもにとっては大きなチャレンジとなる運動会。だからこそ、慣れ親しんだダンスが勇気と元気を後押ししてくれます。

考えてみれば、特定の期間を運動会準備にあてる小学生以降と違って、長い期間を使い慣れ親しみながら準備するのは園児ならではかもしれません。

わが家では、園で覚えてきた歌を家でも流してあげたり、家族みんなで一緒に歌って踊ったりして楽しんでいます。楽しい時間を重ねることで「大好き」な気持ちがふくらみ、自信をもって自己発揮できるように感じますし、運動会本番も、本人・家族ともますます演技を楽しめるのでおすすめです。

年齢ごとの成長を促し刺激を受けるのが運動会の醍醐味

運動会では年長クラスの活躍も見どころです。わが子の園では、組体操を披露し3年間の集大成として華やかに盛り上げてくれます。演技後におうちの方へ感謝のメッセージを伝えるシーンは感涙ものです。

モンテッソーリ園ならではと感じたのは、日本や世界の名所をモチーフに組体操を行うことです。年中の春から少しずつ学んできた「日本地図・世界地図のお仕事」の地理学習と組体操が結びついているのです。名所の写真や映像を見て、どの地域にあるか地図で確認し、名所の名前と特徴を覚えて、クラスのみんなで力を合わせてモチーフを作ります。

今年は、私の地元で有名な場所がモチーフとして採用されたので、息子が「来年組体操頑張ってママのふるさと作りたい!」と、年長児に憧れを抱いて張り切っていました。

ほかにも、年長ならではのすごいスピードのかけっこやリレーも見どころ。年中・年少の子どもたちにとっては、自分も大きくなったらこんなことができるかもしれないと大きな刺激になるようです。

また、年長の子どもたちは年中・年少の頃を思い出しながら、年下のおともだちをサポートする姿が見られます。

「小さな頃からの積み重ねがあってこそ大きく成長する」…そのイメージを自然と感じられるのが運動会のいいところかもしれません。

「出番でないとき」にこそ成長がある!

近くの小学校等を借りて運動会をする園も多いのではないでしょうか。息子が通う園でも外部会場を借りて運動会を行い、事前に大きい公園に出向いて5回ほど練習を行います。プチ遠足のようなワクワク感とともに、運動会をよりリアルにイメージできます。

本番を意識して練習を行う中で注目したいのが「実は出番でないときのほうが大変かつ大切な成長がある」ということです。

他クラスの出番を待ち、静かに観ることは小さな子どもにとっては「忍耐」が必要なこと。モンテッソーリ教育の「静粛の練習」にも通じますね。わが子の園では、練習の時におともだちの良いところをしっかり観察して、素敵だと感じたところをコメントし、褒め合います。コメントをすることで観察力と表現力が育まれますし、良いところを見つけられたことも評価してもらえます。また、おともだちに褒められることは自信とさらなる成長につながるようです。

息子も、褒められたところが自信となり「手の振り方が大きくできてたでしょ?頑張ったよ!」と笑顔で話していました。「好き」と「自信」と「成長」は大切なワンセットなんですね。

この「静かに観て良いところを見つけて褒め合う」中で、子どもたちは静かに観て味わう楽しさを自然と学ぶことができているのです。

運動会を通じて感じた3つの成長ポイント

運動会を通じて感じた成長ポイントは3つあります。

ポイント1:集団の中で自分が大切な存在であることを知る

運動会は「集団行動の練習」と考えられがちですが、実は「おともだちとの関わりの中で自分の良いところを知り、自分が大切な存在であることを知る」貴重な機会と感じます。良いところを褒めてもらう・かけっこ出走前の呼名に元気に「ハイ!」と答えて思いっきり走る・みんなで行う演技やリレーの大切な一員として頑張ることなどを通じて、自信を持って自己発揮できる楽しさを経験できます。わが家も「好き」と「自信」と「成長」が運動会で一気に育まれる実感がありました。

ポイント2:同年齢・異年齢のおともだちに良い刺激を受ける

おともだちをよく見て、良いところを見つけ、それを表現する。それを繰り返す中で、自分もやってみたい、こうするともっと良くなると感じる心が育ち、より良い行動につながり、さらに褒められて自信になります。そして、すごいと感じるお兄さん・お姉さんの姿が憧れや目標となるだけでなく、年下のおともだちの心に寄り添って支えてあげる姿も見られます。

ポイント3:「思いっきり身体を動かすvs 静けさを大切にする」メリハリが大切

先生から言われて印象に残ったのが「思いっきりはしゃいで外遊びした日ほど静かに穏やかに室内活動ができるんです」という言葉です。

モンテッソーリ教育は室内で手先を使ったお仕事を黙々とやる、というイメージが先行しがちですが、それだけでなく、思いっきり動いて遊び発散することも上手に取り入れているのだなと感じます。だからこそ、身体のコントロール力や健やかな心も育まれるのでしょう。満たされた気持ちがあれば、穏やかに静けさを楽しむことができる、そのメリハリが子どもたちをぐんと成長させてくれるのです。

園が華やかなお店に変わる作品展

わが子の園では、運動会が終わり秋も深まった頃、作品展が行われます。
日々作成してきた作品やモンテッソーリのお仕事を展示するのですが、その作品展示が「お店を彩るディスプレー」になります。実は、作品展のメインとなるのは「子どもたちがつくるお店やさん」なのです。

子どもたちは店員さん・お客さまの両方の役割を楽しみ、おうちの方や地域の方もお客さまとして来店します。そんな一味違う作品展での成長ポイントについて振り返ってみます。

「自分のお仕事が人を楽しませる」という経験

店員さんは園の子どもたち。そして、商品を準備するのも子どもたちです。みんなで作ったクッキーなどのお菓子を販売したり、キャンディなどのラッピングに塗り絵やデコレーションをしたり…時にはアクセサリーや絵手紙など、作品そのものを販売することもあります。

中にはカフェなど、コーヒーやお茶を入れてお客さまに提供するお店もあります。お皿を割らないよう、飲み物をこぼさないように運びます。

商品づくりも店員さんとしての役割も手先のコントロールがとても大切です。お客さまに対し行うことで、より丁寧に意識して行う力がつきます。

わが子は提供するコーヒーをこぼしてしまい、泣きそうになりましたが、店員さんは泣いてはいられません。お客さまに「お待たせしました」の気持ちをしっかりと伝えて再チャレンジしました。

「社会の中で働く」ことを疑似体験することでわかる面白さ・大変さを感じられることはもちろん、作品や店員さんのお仕事で人を楽しませ笑顔にできるという経験により、大きな自信が育まれたと感じます。

本物のお金を使うことで「価値」と「数の感覚」を育てる

作品展でのお店やさんは、紙やおもちゃのお金でなく「本物のお金」を使います。ここには2つの大切な意味が込められています。

本物のお金だからこその価値と責任を知る

「自分たちのお店やさんのお仕事や商品は本物のお金を払う価値がある」という経験により、心を込めて一生懸命にお仕事をしようという気持ちが生まれます。
責任を持って働くことを学び、社会で働く意義や将来の夢を考えるきっかけになる子どももいます。

「数の知識」を育む

お店やさんでは、両替やおつりの概念も学びます。そして、本物のお金だからこそ間違えないよう気をつけなければいけません。

モンテッソーリ園らしく、お金の計算には金ビーズを使います。
普段から数を学ぶために使っている「金ビーズのお仕事」が実際のお金にも活かせるというのも子どもたちにとって興味深いことです。

わが子の通う園の作品展は変わった趣向のものですが、一般的な作品展と共通する視点で感じた成長ポイントが2つあります。

わが子の通う園の作品展は変わった趣向のものですが、一般的な作品展と共通する視点で感じた成長ポイントが2つあります。

ポイント1:長い時間をかけて大きな作品にチャレンジする

日々の作品に加え、作品展に向けて大きな作品を作る場合も多いのではないでしょうか。
作品づくりは大変な作業もあり、子どもたちにとってはハードルを感じることもあるかもしれません。
しかし、出来上がって飾られるとき、見た方が楽しんでくれるときの達成感が「作る楽しさ」としてこれからの糧になっていきます。

わが子の場合、クリスマスをモチーフとしたビーズの刺繍や人形づくりなど、季節感があって本格的な作品にもチャレンジしていました。季節を感じ暮らしを豊かにする作品づくりができるのも嬉しいですね。

ポイント2:自分の作品で誰かを楽しませられることを知る

作品の展示をおうちの方やおともだち、地域の方などに見てもらい、楽しんでもらえることで幸せを感じる経験ができます。

「自分の力で誰かを笑顔にできる」ことは生きていく上でも非常に大切な経験であり、自分の存在価値を感じることにも通じます。

いいところを褒められることで、自信を持ち、ますますのびのびと自己発揮ができるようになるはずです。

まとめ

今回は、運動会・作品展を通じて感じた成長ポイントについてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。

共通して感じたことは、行事は普段の保育では味わえない「大きなチャレンジ」と「大きな自信」を与えてくれるものだということです。

だからこそ、そのチャレンジを知って応援し、自信をもっとつけられるように、たくさん褒めてあげることが成長につながるのではないでしょうか。

大きなチャレンジであるぶん、準備の過程で疲れを感じたり不安定になったりする日もあるかもしれません。そんな時は、話を聞いて温かく包んであげたいものですね。

チャレンジを乗り越え、行事が終わった時には、すがすがしく成長した表情がきっと見られるはずです。